2023年7月13日(木)

 史記の韓信の物語をつまびらくと、「あきらめることさえしなければ、我々の人生というのは無限の可能性に満ちている」ということを、改めて実感させられます。

 さて、昨日のお話の続き……
 劉邦は大将軍にした韓信を呼び寄せ、「さて、大将軍はわしにどんな策を教えてくれるのか?」と尋ねます。

 韓信は劉邦に向かって、「王様(劉邦)が今、天下を統べるにおいて、争わなければならない相手は、項王(項羽)ではないでしょうか」と、まず確認をしました。
 劉邦が「そうだ」と答えると、韓信は「ところで王様は、自分と項王とを比べてみて、勇猛さや情の深さにおいて、自分がかなう相手だと思いますか?」と尋ねます。

 劉邦が「かなわぬ」というと、韓信は「私もそう思います」と、即座に同意しました。
 まったく韓信も、少しは言葉の言い回しに気を遣えば良いのに、これでは身もフタもありませんね(笑)

 しかし、韓信はこの後、劉邦が項羽に比べて優れている点と有利な点を、こんこんと冷静に説きました。
 項羽は勇猛で情が深いが、人に対して狭量であること、項羽がこれまでしてきたことの影響で、人心は離れ、民の恨みをかっていること、それとは逆に、劉邦はしっかりと人心をつかんでいるという点などです。
 韓信もそういったことをよく知っていたからこそ、項羽の陣営を出て、劉邦の陣営に加わったのかも知れません。

 その上で韓信は「項羽を討つのは、たやすい」と、ハッキリ断言します。
 劉邦とその臣下たちは、みんな韓信のその言葉に納得しました。

 劉邦が韓信のことを認めるようになったのは、この時からです。
 また、韓信も自分を認めてくれた劉邦の為に、一生懸命尽くしました。

 もしも、韓信の存在がなければ、劉邦が天下を取るのは不可能だったと思います。
 そして人生というのは、人と人との出会いによって切り開かれていくものだと、どうしても感じずにはいられません。

 (2013/04/08パリブログ「目指しているものがあるから妥協しない」をリメイク)

 浅野 太志